Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS

新幹線の手荷物検査の代替コントロールは可能か?

毎月仕事で新幹線を使う身としても気になる新幹線の凶行がまた発生しました。この件について、既に識者の方々が対策強化について語られていますが、私も少し考えてみます。

 のぞみが新横浜駅を出発したのは9日午後9時40分過ぎ。小島容疑者はその後、ナタを持って立ち上がり、右隣の窓際席「18E」に座っていた女性に襲いかかった。18Eの女性はしゃがむようにして逃げたが、肩を切られた。さらに通路を挟んで容疑者の左隣「18C」に座っていた女性も驚いて逃げ出したが背中などを切られた。

 後ろに座っていた梅田さんが騒ぎに気づいて止めに入り、小島容疑者と車両中央付近でもみ合いになった。その間に乗務員が他の乗客を別の車両に誘導。小島容疑者は梅田さんに馬乗りになり、ナタで切りつけ続けた。新幹線は小田原駅に緊急停車し、県警小田原署員が小島容疑者を取り押さえたが、抵抗はしなかった。

 のぞみが新横浜駅を出発したのは9日午後9時40分過ぎ。小島容疑者はその後、ナタを持って立ち上がり、右隣の窓際席「18E」に座っていた女性に襲いかかった。18Eの女性はしゃがむようにして逃げたが、肩を切られた。さらに通路を挟んで容疑者の左隣「18C」に座っていた女性も驚いて逃げ出したが背中などを切られた。

 後ろに座っていた梅田さんが騒ぎに気づいて止めに入り、小島容疑者と車両中央付近でもみ合いになった。その間に乗務員が他の乗客を別の車両に誘導。小島容疑者は梅田さんに馬乗りになり、ナタで切りつけ続けた。新幹線は小田原駅に緊急停車し、県警小田原署員が小島容疑者を取り押さえたが、抵抗はしなかった。

 のぞみが新横浜駅を出発したのは9日午後9時40分過ぎ。小島容疑者はその後、ナタを持って立ち上がり、右隣の窓際席「18E」に座っていた女性に襲いかかった。18Eの女性はしゃがむようにして逃げたが、肩を切られた。さらに通路を挟んで容疑者の左隣「18C」に座っていた女性も驚いて逃げ出したが背中などを切られた。

 後ろに座っていた梅田さんが騒ぎに気づいて止めに入り、小島容疑者と車両中央付近でもみ合いになった。その間に乗務員が他の乗客を別の車両に誘導。小島容疑者は梅田さんに馬乗りになり、ナタで切りつけ続けた。新幹線は小田原駅に緊急停車し、県警小田原署員が小島容疑者を取り押さえたが、抵抗はしなかった。

www.asahi.com

 また国土交通省は10日、JR各社と大手民間鉄道会社に対し、セキュリティー確保の徹底を文書で要請。駅などに警備員を配置し、「警戒中」と記した腕章をつけさせるなど、「見せる警備」での犯罪抑止の一層の徹底を求めた。また、非常通報装置を適切に使い、車内の異常への素早い対応を要請した。

 新幹線車内では2015年の「のぞみ放火事件」のほか、刃物を使った殺傷事件も起きている。

 中国など海外では、高速鉄道の駅で空港のような手荷物検査が実施されており、新幹線でも導入を求める意見がある。だがJR各社は「乗客の利便性を著しく損なう」と消極的国交省の幹部も「乗降客数やダイヤの過密さ、駅の形状からも困難」と話す。

朝日新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

以前に新幹線内で油を撒いて自殺を図った事件がありました。この事件を受けてJR東海防犯カメラ搭載車両を拡大しています。何があったか乗務員(司令室)がいち早く察知し迅速な対応が出来るようにするためですが、以前の事件でも出ていた手荷物検査実施?という課題について、今一度考えてみたいと思います。

foxsecurity.hatenablog.com

JR各社あるいは、それを管轄する国交省利便性(やコスト)を考えると「手荷物検査は無理という訳ですが、その代わりの対策が、「見せる警備」だけだとすると、犯罪を犯そうとする側は、同じ脆弱性(攻撃パターン)が有効であると考えるかと思います。

 

今回の事件に対する直接的な防御策としては、JR東海の車掌さんが乗客を誘導した際に用いた、

「座席シートを取り外して盾にする」という手法が逃げる際に有効そう、という点ですが、

それは、犯罪が発生した際に有効な対策ではあるのでしょうが、これだけでは不安すぎます。

 

こうした犯罪を防止観点では、例えば以下のようなフェイズで防御策を考える事が有効ではないかと思います。(※⑥⑧⑩⑪がJR各社が実践して/しようとしている事③⑨が私的推奨案です)

 A 乗車券購入

   ①乗車券購入者を記名式にする(購入者の氏名、住所などを登録しスクリーニング)

 B 改札

   ②手荷物検査(金属探知機)※空港方式

   ③手荷物検査(視認確認)※テーマパーク方式

   ④ウォークスルー型手荷物検査 ※要開発

   ⑤乗車券記名者のID証確認 ※飛行機の搭乗券とパスポート確認方式

   ⑥見せる警備(改札付近に警察官又は警備員を配置し不審者をチェックする)

   ⑦大型荷物の預け入れ

 C 乗車(攻撃発生前)

   ⑧車内巡視(車掌・警察官・警備員)

   警備員常駐

 D 乗車(攻撃発生後)

   ⑩車両内監視カメラ

   ⑪警報装置

 

①は中国新幹線(CRH)で実現されています。回数券や乗車券が金券扱いの日本では違う意味で実現が難しい可能性もありますが、誰が乗っているのか、⑤のID証確認まで行える場合には、誰がやったのか・・・といった部分がすぐにわかります。また本人以外が乗車券を持っているのは不自然であり、そこをよく確認する事で、航空機のテロの様な犯罪を未然に防げるかも知れません

②はJRや国交省が「困難」=無理といっている方式です。最大の理由は時間がかかりすぎる点。飛行機であれば搭乗前15~20分前にチェックインは可能かも知れませんが、日本の大動脈でもある新幹線の乗車人数を考えると乗車前に余計な30分がかかる事は、新幹線のメリットを大幅に下げてしまうので採用したくない。そういった考えのようです。

③は、私はこれからやればいいのでは?と思います。それでも改札前に時間はかかるものの、今回の事件では荷物の中に鉈を入れているのです。大きな刃物であれば、金属探知機を使わない簡易荷物チェックでも気づけた可能性があるかと思います。しかしディズニーランドやUSJ等と違い、新幹線の場合は大きな荷物(スーツケース等)を持っての移動も考えられます。これを簡易手荷物チェックで一律に確認するのは・・・おそらく問題が出てきますので、スーパーのレジの様に手荷物のみの方と、大きなスーツケースを持つ方と分けての検査運用も考える必要がありそうです。

④は事件の諸々の記事を読んでいて、某ベンダーが開発中(下記参照)と書かれていました。とは言え2020年までの実用は無理だと思います。

「ウォークスルー型爆発物探知システム」、羽田空港で初フィールド実験 | SECURITY SHOW

⑤は①とのペア施策です。本人確認をする事で事件があった際に、すぐに身元が判明するといった副次的な効果が期待できますが、一番良いのは確認されているという、けん制効果だと思います。併せて、ブラックリスト(要注意)人物の確認を事前に行う事で、改札入場時に止められますので、手荷物検査をやらないのであれば、(それでも諸々の弊害があるかと思いますが)現実的な解の1つであると思います。中国新幹線でも実施例がある所も説明がつきやすいのではないでしょうか。

⑥は現在もJR主要駅で実施されています。犯罪抑止に一定の効果がある見せる警備です。とは言え、事件前から東京駅の改札内には警官が立っていたと思うのですが、今回の事件に関しては効果があったとは言えないのではないでしょうか。

トランプ大統領の様な要人が来た場合にとられるような厳戒態勢(警備に立っている警官の人数が全然違います)であれば効果があると思いますが、JR各社という民間企業のために警察が協力できる範囲も限界があると思いますし、JR側が警備員を立たせていても・・・正直、警察官の方々ほどにインパクトは無いと思いますし、コストを考えると限界があると思います。

⑦はアメリカの長距離鉄道アムトラック(amtrak)がやっていたかと思います。とは言え、飛行機であれば専用スペースに大型荷物預け入れが出来ますが、日本の新幹線ではその様な積載専用スペースもありませんし、改造が出来たとしても、積み下ろしの時間を考えると、新幹線の運用には合いません。

⑧も現在も取られているかと思います。たまに東海道新幹線でも巡視中の警察官を見かけます。とは言え、警察官の方の協力にも限界があると思いますし、様々な役目がある車掌さんに対して警備巡視の業務を大きく任せるのは無理だと思います。残るのはJR各社が警備員を雇い、巡回強化する事くらいでしょうか。

⑨は、⑧の車内巡視と同じでないか?と思う方も多いかも知れませんが、私の発想は違います。車両に警備員を置くことで、万が一の事件発生時に専用の訓練を受けた警備員に守ってもらうイメージです常駐警備員のコスト問題で早々にJR各社には却下される案に見えますが、有償サービスでも良いのではないかと思います。例えばグリーン車には常駐、指定席の一部も料金を高くして常駐車両を作れば実現は可能だと推測します。また・・安全強化には料金を多少高くしても良いという(安全意識の高い)客の車両に例えばセコム社の警備員が乗ることは良い企業宣伝になるかと思いますので、通常よりもコストを圧縮させる事も期待できるかも知れません。

⑩と⑪は既に各JRが取り組んでいますね。車両カメラは・・・若干の抑止効果、そして事後対応として一定の効果があると思いますが、刃物や爆発物が車内に持込まれて事件が発生してしまった際には、効果が無いとは言いませんが、防御策としては不十分でないかなと思います。

 

 

余談です。私もそれなりの頻度で新幹線を使っていますので、事件を受けて色々と考えさせられました。いつ襲われるか分からない。JR各社がすぐに取り組むべきだと思うのは、乗客の「安全への不安」の解消ではないでしょうか?

有効な対策である手荷物検査をJR各社は採用する気が無い訳ですから、不安を軽減するような対策を是非真剣に討議してもらいたのです。1年以内に2件の車両内での重大事件が発生した訳ですから、それが抜本策でないとしても、せめて軽減策や緩和策について良い対策が打たれる事を切に願います。

 

最後に、勇敢に戦い、犠牲となった男性乗客の勇気と行動に対し、心からの敬意と、そして残念な結果になった事をお悔やみ申し上げます。

 

新幹線のイラスト「のぞみ」

 

 

更新履歴

  • 2018年6月23日PM(予約投稿)