Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

警察の意地を感じた

令和になる前に捕まえたかった。そんな想いを感じる逮捕のニュースでした。

www.sankei.com

 警視庁捜査1課は校内の防犯カメラに写っていた作業員風の男が関与したとの見方を強め、カメラ画像を移動方向にたどる「リレー方式」と呼ばれる捜査で足取りを追跡、男の居場所を突き止めた。

 「不審な物を拾った」-。26日、中学校の職員からの通報で発覚した今回の事件。天皇陛下の譲位や皇太子さまのご即位を前にしたタイミングで発生したこともあり、警視庁は捜査を急いだ。

 悠仁さまの机に刃がピンク色に塗られた2本の刃物が置かれるという異様な犯行態様から明確な思想的背景はうかがえず、捜査の中心を担ったのは思想犯を捜査する公安部ではなく、殺人などの凶悪犯罪を担当する捜査1課だった。

 学校側からの通報を受けた同課が校内の防犯カメラを確認したところ、26日昼前、ヘルメットをかぶった作業員風の不審な男がうろつく様子が確認された。「この男が関与した可能性が高い」。捜査幹部は当初からこのような見方を示し、男の足取りを追うことに初動捜査の重点が置かれた。

 同課などは、学校周辺の駅などの防犯カメラ画像を収集。逃走経路を調べたところ、地下鉄の駅の防犯カメラには、作業着と異なる衣服を身に付けているものの、不審な男と背格好のよく似た人物が写り込んでいた。同課は男が逃走のために着替えた可能性があるとみている。

 その後も移動先の防犯カメラ画像をたどり、目撃情報や交通機関の移動記録などと照合するなどして、男が滞在していた神奈川県平塚市内のホテルを特定した。

産経新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

容疑者逮捕まで辿りついたので、ようやく捜査当局が隠していた事件の情報が出てきたのかなと思います。併せて、警察の「平成中に容疑者逮捕」という強い意志を感じました。

容疑者は犯行を認めている様ですので「犯行動機」は追々判明してくるのかと思いますが、続報が出てきているので、もう一度この事件を考えてみたいと思います。

警視庁は29日、住居、職業不詳、自称・長谷川薫容疑者(56)を建造物侵入の疑いで逮捕した。「中学に入ったのは間違いない」と容疑を認めているという。

朝日新聞記事より引用)

 

最初に気づいたのが、少し以前の報道内容と違った容疑者の動きとなっている部分でした。各社記事の内容を、時系列で拾ってみます。

日時 出来事
4/26 10:30過ぎ

正門以外の場所から(容疑者は)キャンパスに侵入

侵入前と思われる正門前の路上を通り過ぎる姿がカメラに映っていた

(一部の防犯カメラ配線を切断?)

4/26 10:50頃

 

インターホンを鳴らし、水道工事の関係者を装い(容疑者は)中学校に侵入

4/26 11:10 正門を出る(容疑者の)姿がカメラに映っていた
  茗荷谷駅の防犯カメラに侵入した男に似た人物が映っていた
4/26 12:00頃 刃物を職員が発見
4/26 18:20頃 警察に(職員が)連絡
4/29 21:15頃 神奈川県平塚市内のビジネスホテル(東横イン)で容疑者を発見し身柄を拘束
4/29 21:25頃 ホテルの裏口から捜査員に連れられて警察車両に乗り込んだ

 

ま時系列的な部分で気になったのが容疑者の中学校への侵入時間帯です。捜査当局の思惑があったのかは分かりませんが、11時頃に正門(入る姿が)で容疑者が防犯カメラに映っていたと当初報じられ、(推測も含め)お昼位の不正侵入だと思われていましたが、侵入時間が10:50時頃と1時間早かった事が分かります。

11時10分に防犯カメラに逃げる姿が映っていた事から、容疑者が中学校内で刃物を置くに要した時間は15分程度(キャンパス滞在が20分)であった事がわかります。

 

前記事でも書きましたが、15分で悠仁殿下の自席にたどり着けてしまった=短時間の犯行が可能となってしまったのは、学校側からすると反省の余地があるかと思います。

 

また、今回の逮捕の追加報道をきっかけに、もう1つ脆弱点が判明したのが、大学キャンパスへの(最初の)侵入が防犯カメラで押さえられていなかった点です。一般的に施設に入る際の(守衛所)セキュリティは厳重なので、容疑者はバイパスして侵入したのではないかと推測します。大学キャンパスでもあるので・・・仕方が無い部分もあるかも知れませんが、最初の入門ゲート(守衛所)があまり訳に立ってない事が図らずも判明してしまった気がします。

 

追加記事を読んでいて、今回の逮捕が危なかったかも知れない情報が出ていたのが、容疑者が不正侵入前に一部の防犯カメラの配線を枝きり鋏で切断していた可能性があるという事です。(本来は防犯映像が映ってない事でセキュリティ担当が調査に入らないといけないと思いますが・・・)正門であったり、中学内の防犯カメラ配線が切れていたとすれば、容疑者が逃げ切れていたかも知れません。

悠仁さま中学校の防犯カメラの配線切断 侵入容疑者関与か - 毎日新聞

 

また、時系列で見ると明確なのですが、学校側の警察への連絡の遅さも際立っています。警察に連絡するまで6時間かかっているのは遅すぎで、如何なものかな?と思います。学校側は事件を隠蔽しようとしたのではないか?と言われても仕方がないのではないでしょうか。

news.tbs.co.jp

 

学校側には、やはり改善すべき点が多い様ですが、今回の事件の容疑者スピード逮捕。警視庁捜査1課が動いたという事もあるのか、捜査当局の執念にも似た「意地」を感じました。

捜査手法は最近良く聞く「リレー方式」でした。監視カメラで容疑者の人相を把握し、目撃情報などと併せて、茗荷谷駅(乗車駅)の出改札データ(Suica/PASMO等のICカードデータ+監視カメラ画像)で移動する容疑者の足取りを降車駅(平塚駅)まで追跡し、降車駅周辺の監視カメラ映像(と目撃情報)でホテルの場所を特定したのかと思います。

昨晩のテレビ報道映像には「東横イン」が映ってましたので、平塚駅前の「東横INN湘南平塚駅北口1」か「東横INN湘南平塚駅北口2」のどちらかかな?と思いますが、ビジネスホテルはフロントを中心に防犯カメラが必ずありますので、カメラで人物特定がされる事への警戒心が容疑者には薄かったのかなと思います。

 

自分だったらどう、こうした警察の捜査手法を逃げるかを想像してみると・・・ここでは書けないアイディアがいくつかありましたが、言えるのは電車を(普通に)使うのは、今や(犯人側にとって)正しい選択ではなくなりつつある事でしょうか。

 

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更新履歴

  • 2019年4月30日AM(予約投稿)