中国メディアがAI分析結果として、日本経済の不振を40代男性の非婚率が原因と導き出したと環球時報が報じているようです。
news.livedoor.com
AIの思考回路に従えば、一定の道理があるといえる。AIの考える筋道はこうだ。「40歳の男性がいて、一般的に20年近く働いており、職場ではそれなりの地位についていて、給与は新入社員の2~3倍になる。適齢期に結婚していれば(日本の男性の平均結婚年齢は30.5歳)、40歳になった時には小学生の子どもの1人もいるはずだ。子どもは塾に行くだろうし、大学に行くための学費の積み立ても必要だ。子どもが成長すれば自分の家を買うことになり、手持ちの資金が足りなければ、銀行からローンで借りる…つまり、40歳の男性が60歳で退職するまでの20年間は、着実に、『高い強度』で消費が続く期間ということになる。
(ライブドア記事より引用)
◆キタきつねの所感
少し違和感のある記事でした。まず記事の発信源が環球時報(中国)です。そして記事の内容が、
最近、日本の研究者がAIを利用して、ここ数年来振るわず、成長力の乏しい日本経済について診断を試みた。
(ライブドア記事より引用)
と、何故か日本のAI研究者の研究結果として報じている所も、何故だろうなと思った部分。日本でこのニュースが報じられているかと言えば、後追い記事のソースは、全て中国メディアの報道を指しています。AIが導き出した解答というのは、ユニークなポイントが隠れており、意表を突かれる事が多いのですが、AI回答が導きだされた筋道なるものも、独身だと子供や家に費やされるべき家や教育費といった消費行動が膨らまないので日本の景気が悪い、と読めます。
ローンを組むまでは行かなくでも、独身でも趣味にお金を使う訳であり、住居費も都心では高くなっていますので、消費が無い訳ではないと思うのです。因果関係を導き出しているとは思いますが、その背景は例えば『給与が上がらない』『上げるべきポストが無い』『終身雇用が崩れ始めていて不安』といった、失われた20年の間の社会背景の要素が、一般的な調査データからは出てきているはずです。
その中で、AIの指摘が40代男性が結婚していれば経済は停滞してなかった、、、という分析に落ち着くのは、やはり違和感がぬぐえません。
そもそも、日本のAI研究者というのは誰なのでしょうか?ネットで探しても、同じ調査結果らしきものが出てきません。これも不自然なところ。
少し調べてみた結論としては、中国メディアが記事を書いた際に使ったであろう、参考ソースは、おそらくNHKスペシャルのAIが試算した「日本の未来を動かすカギ」でないかと思います。この分析には単身40代が出てきます。が、過去(失われた20年)の話をしているデータではなく、今後の事を示しているAIによる分析です。
japanese.engadget.com
「40代ひとり暮らし」が増えると、「自殺者数」「餓死者数」「空き家数」「救急出動件数」などが増え、「合計特殊出生率」「老人クラブ会員数」などが減る……との傾向が示されたからだ。全人口の1.9%、249万人にすぎない「40代ひとり暮らし」が、ここまで大きな存在になりうるというのは意外な結果だ。
とはいえ、ひとりでいることを望む人もいる。AIは、個人の生き方に対する余計なお世話にならないか。
ネブラはこの問いにも、一風変わったアイディアにつながる分析結果を示す。
「家賃を下げれば、『40代ひとり暮らし』が激減する」
(HUFFPOST記事より引用)
NHKスペシャルでのAI分析結果、40代の男性が日本の未来に影響・・・という所はなかなか面白い指摘でした。そしてその対策として、「家賃を下げる」事が有効。AIの分析は普通の調査データと比べて示唆に富んでおり、考えるべきポイントがある・・・時もあるな、と番組を見てた時に感じました。
AIの分析は、変わった視点から指摘という事もあり、その分析に至った背景(補強データ)も重要となってきます。そうした意味では、AIの判断には咀嚼が(まだまだ)必要であると言えます。
今回の中国メディアの分析についても咀嚼が必要であると思われますが、AIではない身で愚考するならば、中国国内向けの記事だったと考える方がしっくりきます。また、引用したのがNHKのデータであったと仮定するならば、同じ様に未婚率上昇と土地バブルの問題を抱える中国で、家賃を下げるなどと言ってしまうと、中国バブルの軟着陸に良い影響を与えるとはとても思えませんので、未来へのAIの分析を過去のものと意図的に書き換えた、そんな所ではないでしょうか。
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