接触確認アプリ(COCOA)の運用実績が報じられていました。「3人」という結果は、厚生労働省の周知徹底だけの問題では無い気がします。
www3.nhk.or.jp
新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触した疑いがある場合に通知を受けられる「接触確認アプリ」について、通知に必要な感染した人からの登録がこれまでに3人にとどまっていることが分かりました。厚生労働省は、感染拡大を防ぐためにアプリの利用を呼びかけています。
スマートフォンにダウンロードできるこの「接触確認アプリ」は利用者どうしが15分以上、1メートル以内に近づくと、相手のデータを互いに記録します。
(中略)
NHKのまとめによりますと、今月3日から7日までに感染が確認された人は全国で1100人余りに上っていて、感染をアプリに登録した人の割合は0.3%以下となっています。
一方、アプリのダウンロード数は、8日午後5時の時点でおよそ610万件となっています。
(NHKニュース記事より引用)
キタきつねの所感
新型コロナ禍において、個人のプライバシーを守りながら、濃厚接触の疑いが分かる、良いアプリだと思います。セキュリティ関係者の方々も多く携わり、多大な努力の末に、海外も見ても非常に早くリリースできた事も分かります。
しかし、現実はこの「3人」という数字に表れている気がします。このままだと、接触確認アプリ(COCOA)は、「アベノマスク」に続いて失敗に終わる気がしてなりません。
現在のアプリのダウンロード数は、約610万人です。国内の携帯電話の契約台数は約1億8,200万台です。接触確認アプリがダウンロード可能なスマートフォンの普及率が、平成30年度の情報通信白書では60.9%となっていますので、単純試算すると、約1億1,000万台が接触アプリをダウンロード可能なスマホ(iOS/Android)端末となります。
しかし、この数字の中には2台持ちの方や社用携帯も含まれると思いますので、1人1台だけ持っていれば十分と考えて、(根拠はありませんが)ざっと半分の6,500万台が、接触確認アプリをDLして欲しい端末対象と考えると、現在の普及率は約9%(610万DL/6500万台)となります。
約610万件ダウンロードされているCOCOA。このアプリが効果を発揮するには国民の6割以上が利用する必要があるとされています
(テレ朝ニュース記事より引用)
目標値の60%以上は、単純試算では3,900万台(DL)以上であったと推測されます。つまり更に3,000万台以上のDLが必要な状況と言えます。
スマホゲーム等との比較は出来ないかも知れませんが、スタート直後のダウンロード(瞬発力)を意識してか、大型アプリのリリース直前にはテレビCM等が流れる事が多いかと思います。
接触確認アプリ(COCOA)は、リリース前後にニュース等で報道はされましたが、厚生労働省は、それ程PRに積極的だった様には思えません。
初動ミスによって、水際でコロナを抑えきれなかった事が、(他国よりマシという面はあるにせよ)日本での緊急事態宣言に結び付いてしまった要因でもあった訳ですから、東京都も含めて、もっとこのアプリを初動で推しても良かったのではないでしょうか。
一方で、感染者登録「3人」(約0.27%)については、厚生労働省が言うようなPR不足だけが原因とは思えません。
厚生労働省は「感染の拡大を防ぐためにアプリを利用してもらうよう協力を求めており、今後も周知に努めたい」と話しています。
(NHKニュース記事より引用)
仮に先ほどの試算、約610万台にアプリがインストールされていて、普及率が9%だったとすれば、登録者は1100人の9%、つまり「99人」が感染登録の期待値となります。
「歌舞伎町」での登録率や、登録者の地域や年代差もあろうかと思うので、こちらも単純比較してはいけないのかと思いますが、単純試算のデータ上では、少なくても3人は桁が違うと言えます。
これは、5月末のブログ記事でも触れましたが、私は制度設計の問題だと思います。
新型コロナウイルスへの感染が確認された利用者が、保健所から発行される処理番号を登録すると、記録された相手に濃厚接触の疑いが通知されるしくみで、今月3日から通知ができるようになりました。
(NHKニュース記事より引用)
「利用者が登録するのが任意」な、いわば性善説に基づいた運用になっています。麻生太郎副総理は、”日本は「民度」が高いからコロナ禍の死亡率が低い”旨の発言をされていました。
勿論、大多数の方は暑い中、マスクも着用して、密を意識した行動を取られていると思います。
しかし、「感染者」の方はどうでしょうか?
一部の「接待を伴う夜の街」に行かれる方や、マスクを外した従業員の方が感染したというニュースを聞く度に、民度が低い方も当然の事ながらいる。そしてそうした方々が、多く感染している・・と考えると、この性善説な「接触確認アプリ」の現在の運用には、無理がある気がします。
色々な障害はあるのかと思いますが、PRC検査の条件として検査対象者は特別な事由がない限り「接触確認アプリをDLする」事と、感染判明時には「保健所」等が感染者登録する事について、検査者の事前許諾を得る、それだけで、このアプリの有効性は劇的に上がると思います。
性善説ではなく、性弱説で、感染してショックを受けている方がそもそも別の方の役に立とうと思わないと考えて、その登録の役目を、個人情報を元々知れる立場でもある、保健所等に委ねる、そんな運用に変えていくべきなのではないでしょうか。
参考:
foxsecurity.hatenablog.com
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