Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

五山の偽送り火

8月16日の五山送り火を前に、LEDと思わしき偽の大文字が出現した様です。

news.line.me

 

 8月16日夜の「五山送り火」で「大」の字をともす如意ケ嶽(京都市左京区)で8日夜、「大」の形にライトアップされたことが分かった。何者かが山に登り、点灯したとみられるが、真相は不明。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で規模を大幅に縮小して送り火を実施することが決まっており、大文字保存会では「登山者がいたことなどは全く把握していない。このようなことをする人がいると、16日の点灯もできなくなる」と憤っている。

京都新聞記事より引用)

 

キタきつねの所感

お盆で戻って来たご先祖様をお送りする五山送り火、中でも一番有名なのが大文字(如意ヶ岳)かと思います。8月16日より前に何者かが点灯した大規模な悪戯事件、人気のハイキングコースでもあり、「大」の送り火用の竈まで誰でも入れる様になっている事を考えると、いつかは起きた事件だった気がします。

 

と‥おもったら、既に阪神ファン2003年に懐中電灯で阪神マークを点灯させる送り火を過去に実行していた様です。

 

当時の記事は残って無い様ですが、Wikiには

2003年9月13日の夜には、当時、18年ぶりのリーグ優勝目前の阪神タイガースファンのおよそ25人が大文字山に登り、各々の懐中電灯で阪神のHTマークを照らし出した騒ぎがあった

Wikiから引用)

とあり、25人位の集団が30分間懐中電灯を使って阪神タイガースのリーグ優勝祈念(当時マジック2)をした様です。上記のTwitterを見ると・・・相当「大文字保存会」の方々に怒られた様ですが。。。
 

さて、今回の偽送り火、再発防止を・・と大文字保存会は考えている様ですが、セキュリティ視点で考えると、意外に難しいのではないかと思います。

 

 大文字保存会の長谷川英文理事長は川端署に相談したといい、「周到に準備されていたようで非常に腹立たしい。行政や警察とも連携を取りながら、2度とこのようなことがないようにしたい」と話している。

京都新聞記事より引用)

 

対策として一番効果的なのが、私有地である大文字送り火の「竈エリア」の防衛(ゾーンディフェンス)です。

例えば高い金網で人が入れなくしてしまう事なのですが、人気のハイキングゾーン(送り火の竈自体が観光スポット)である事、そして景観が悪くなる事を考えると、この対策を実施するのは難しいかと思います。

また少し高い塀を設置した位では・・・事前準備をしている実行者は、そこを乗り越えて不正侵入する可能性が高い気がします。

そもそも夜間は人気のない場所であるが故に、防犯カメラやセンサーで不審な動作を検知したとしても、”犯人”をその場で捕まえるのは難しいかと思います。

 

以前の阪神タイガーファンの偽送り火事件では、大文字保存会や警察がファンを捕まえ事ができた理由として、以下の2つの要素が考えられます。

 

1つ目が現地で懐中電灯を振っていた間に、登山道入り口(銀閣寺の横かと思われます)で下山するグループを待ち構える事が出来た

2つ目が偽送り火の実行時間です。京都市宇治市のフリーターや学生が実行したのは、午後9時頃から1時間程度だったとされていますので、警察や保存会会員が「起きている」時間だった

 

今回の犯行グループは、この2つの要素をうまく避けた(知っていた)気がします。朝日新聞Tweetを引用しますが、写真から見る限り、白色系のLEDライトを使用していたと見られます。

 

 LEDライトを設置して順々に点灯したとすると、長時間現地にとどまっている必要はありません。また少人数でも実行が可能です。

 

また犯行時間帯は、Twitter上で話題になる(帰宅する)人がまだ居て、警察や大文字保存会も捕まえる体制が整いづらいであろう、午後11時頃と絶妙です。

事実、送り火に関与する京都市文化保護課は、次の日の朝まで犯行に気づいていません。(気づけというのも酷ではありますが・・・

 また京都府警川端署によると、8日午後11時ごろ、「(如意ケ嶽方向の)山に明かりがついている」との通報が1件あった。署員が同署屋上から2、3個明かりがついているのを確認したという。

 8日午後11時すぎ、「大」の字がともっている画像がツイッターに公開された。京都市文化財保護課も9日朝になって点灯の画像をツイッターで確認した

京都新聞記事より引用)

 

如意ヶ嶽への登山ルートで登山道の整備が良く、送り火の竈までの短距離になるのが、銀閣寺横のルートかと思います(恐らく阪神ファンが待ち構えられていたのもこのルートだと推測します)。

しかし、少し遠くなりますが、他にも登山道はあるので、そちらを使われた場合、なかなか犯人グループの”逃走”を防ぐのは厳しいかも知れません。特に、下記地図だと右側が大津市になりますので、警察や保存会がカバーし切れない可能性を感じます。

Wikiから引用

 

大文字送り火の「竈エリア」の防衛(ゾーンディフェンス)が難しいとすると、例えば各登山道の入口に監視カメラを付ける事も有効かも知れませんが、京都市だけでなく、当事者に(被害を受けていない)大津市が入ると思いますので、行政間の調整が必要となり、すぐには設置できないかも知れません。

 

さて、今回の事件、場所が近く、過去に様々な実績がある某大学の学生が疑わしいという声があったりします。 

 

仮に某大学の優秀な学生に対抗するのであれば、竈エリアに木々を偽装した高い位置からの監視カメラ(赤外線機能有)を設置するのが景観対策を含めて、最も効果があるかと思います。

電源取れるかは分かりませんし、そちらもハッキングされそうな気もしますが。。。

 

 

本日もご来訪ありがとうございました。

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 五山送り火のイラスト

 

更新履歴

  • 2020年8月10日 AM(予約投稿)