米国が中小空港での乗客検査の廃止を検討中との記事が出ていました。
www.afpbb.com
米CNNは1日、米運輸保安局(TSA)が中小規模の空港での搭乗客に対する検査の廃止を検討していると報じた。テロ対策の専門家からは懸念の声が上がっている。
TSAは2001年9月11日に発生した米同時多発テロを受けて創設された組織だが、CNNが当局関係者の話や内部文書を引用して伝えた内容によると、TSAは60席以下の旅客機が就航する150以上の空港における乗客検査の廃止について検討しているという。
ただ、大きな空港へ向かう便を利用する乗客には手荷物の検査などが行われるという。
CNNが報じた内部文書の内容によると、中小空港での乗客検査を廃止することで毎年1億1500万ドル(約128億円)を削減でき、リスクがはるかに高いと考えられる大規模な空港の保安強化に充てられるという。
(AFP記事より引用)
◆キタきつねの所感
投資効果の集中と選択、その波は空港のセキュリティまで来るのでしょうか。まだ検討中という事ではありますが、この考え方には既に多くの専門家が懸念の声を上げています。米国の空港は、、日本以上に厳しい乗客(持ち物)検査があります。それは911で米国の誇りを傷つけられたという部分もあるのかも知れませんが、私の体感では、日本ではひっかかからない様な、ベルトや靴も米国の空港では(ほぼ)ひっかかります。そのため、空港の手荷物検査を通過するには時間がかかるのが普通であり、ビジネスや旅行客もそれを見据えた時間計算が必要です。ビジネス思考が強い、トランプ大統領ですので、米運輸保安局(TSA)は「まだ乗客検査を廃止するという決定はなされてない」と否定していますが、検討の背景には・・・大統領の意向もありそうかなと思います。
とは言え、この検査緩和で「コスト削減」は図れたとしても、セキュリティリスクは「高まるだけ」だと思います。仮に中小空港で乗客検査が廃止され、大空港での乗客検査が強化されたと仮定した場合、その体制変更は攻撃者側がすぐ知る事ができます。
だとすれば、攻撃者側は、監視の眼が緩い地方空港から爆発物を持込む事を当然考えると思います。そのままだと、小型旅客機しか攻撃できませんが、LA等の大空港で『乗り換え』をする場合はどうでしょうか?
ただ、大きな空港へ向かう便を利用する乗客には手荷物の検査などが行われるという。
(AFP記事より引用)
とあるので、一見そこは対処されている様に見えますが、中小空港向けの乗客(手荷物検査なし)が爆発物を、あるいは一定量以上の危険物(液体等)を持ち込んだ場合、安全とされている空港の内部エリアが危なくなる可能性があります。また、飛行機に乗る前に手荷物検査をするのであれば別かもしれませんが、ロサンジェルス国際空港(LAX)の様に、中に入ると比較的緩いセキュリティの空港では、現状のままだと、乗り換える日本行きの国際便に対しても攻撃が出来てしまう可能性があります。
結果として、予算を削った効果は、大きな事件・事故(リターン)となって帰ってきてしまう気がします。
CNNのテロ対策専門家であるポール・クルックシャンク(Paul Cruikshank)氏によると、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」や国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)のような武装勢力は、現在も小型の旅客機を含む航空業界を重要な標的とみなしているという。
(AFP記事より引用)
CNNは専門家の声として、こうまとめてますが、少し手間をかければ(何らかの手段でセキュリティホールを突いて中小空港から大空港に危険物を移動できた場合)、もっと標的は大きくなり、国際便ですら脅威対象に入ってしまう・・・こちらの方がテロ組織としてはインパクトがあると考えるのではないでしょうか。
(本日の)余談です。
米国の空港での金属探知機、ビジネスシューズの靴(鉄の釘等が底にある)は『脱ぐ』のが基本です。ズボンのベルトも当然外せと言われ、目の前では太った米国男性の方が落ちるスラックスからパンツを出しながら金属探知機に入ってました。注意不足でジャケットのポケットの中のガムの包み紙(アルミ)が引っかかったこともありますが、カメラの予備バッテリーをカバンの中に入れていた(充電池系はすべて出して検査を受けないといけないようです)所がひっかかったのも、日本の空港ではあまり経験が無く、米国の検査体制を感じたシーンでした。
今回のTSAの検討話も、すべての乗客検査を省略する訳ではなく、おそらくランダム抽出された乗客が検査される(怪しい人は検査対象)のだろうと思いますが、それにしても穴が多すぎる気がしました。

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