Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

選挙も命がけに・・・

セキュリティとは関係ないのですがGW中という事でご容赦下さい。海外のこの記事が気になりました。

jp.reuters.com

 

インドネシアで17日に実施された選挙で、職員らが手作業での開票を長時間続けた結果27日夜の時点で272人が過労とみられる原因で死亡したことが分かった。

同国では、コスト削減を目的に大統領選挙と全国および地方議会選挙を組み合わせた初めての選挙となった。1日で実施された選挙としては、世界最大規模

当日は1億9300万人の有権者の80%が、80万を超える投票所でそれぞれ最大5枚の用紙を投じた。だが、8時間に及ぶ投票を実施したことは、論理的には至難の業であると同時に、手作業で票を数えなければならなかった職員にとっては命取りとなった

総選挙委員会(KPU)の広報担当者によると、選挙関係者の死亡はほとんどが過労関連の病気が原因だった。さらに、1878人が病気になったという。委員会は、死者数の増加によって非難されている。

(Reuters記事より引用) 

 

◆キタきつねの所感

先日日本でも統一地方選挙がありましたが、日本のそれとは比べ物にならない位、インドネシアの選挙は『開票側』に過酷であった様です。投票率が80%という、日本とは比べ物にならない高率なのは羨ましい限りですが、2億人弱の有権者投票となると、日本の有権者数が大体1億人で直近選挙の投票率が44%程度ですので、

’19統一地方選:道府県議選 低投票率止まらず 平均44.08%、8割最低 - 毎日新聞

 

 ・インドネシアの直近選挙の総投票者= 1.93億人×80% で 1億5400万人

 ・日本の直近地方選挙の総投票者数= 1億人×44% で 4400万人

という単純試算となります。

 

一方で投票所の数は、インドネシア80万箇所に対して日本は5万箇所程度H28年の参議院選挙のデータでは約4.8万箇所)です。これを総投票者で割ると、

 ・インドネシアの直近選挙の総投票者÷投票所数= 1億5400万人 ÷ 80万箇所 = 192.5人/箇所

 ・日本の直近地方選挙の総投票者数÷投票者数= 4400万人 ÷ 5万箇所 = 880人/箇所

になります。

 

1人5票という事を考慮して、大体同じ位(962:880)になります。処理すべき人数から考えると日本の選挙の方がうまくこなしているというデータになりますが、選挙の時間が8時間(日本では12時間以上)と短めな事は、単純計算で1.5倍の負荷がかかる事になりますので、かなり大変だった要素なのかも知れません。

更に言えば、日本で言う自動集計機(OCR読み取り)であったり、有権者名簿の精度=事務処理の煩雑化という考え方で、日本の選挙事務で過労死が出たという話は聞きませんので、かなり日本とインドネシアのそれでは負荷が違っていたと推測されます。

 

因みに選挙で使われる用紙、日本では開票負荷を減らす”紙”が多くの地方自治体で採用されていますユポ紙は折ってもすぐ戻るので、投票箱の中で自然と集計しやすい様になるそうですが、こうした『集計の簡略化』という考え方は、目に見えない事務作業(=人件コスト)削減効果が見込めます。

japan.yupo.com

 

 世界最大の選挙、それをこなす事務員が少ない、あるいは負荷が過大すぎる。これは現役政権にとって格好の攻撃材料と言えるかも知れません。総選挙の結果は与党の勝利だった様ですが、

www.sankei.com

 

選挙に勝ってはいますが、選挙の設計で負けた事は、議会や大統領を支える官僚組織へのダメージという意味では大きな敗北であったのかも知れません。インドネシアでも(選挙での)働き方の変革が必要なのではないでしょうか。

 

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更新履歴

  • 2019年4月29日PM(予約投稿)