Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

ホワイトハッカーは脱帽している

英語記事を読んでいて気になったのが「ハッカー」の呼び名。「Ethical Hacker」になろうという記事なのですが、そのまま素直に訳すと「倫理的ハッカーとなります。
hackernoon.com

1.ハッカーの考え方を解釈する

倫理的なハッキングを学ぶことの合理的な利点は、企業組織がどのように保護されているかを改善し、助言する能力です。どの組織にとっても、サイバーセキュリティに関して、本質的な危険はダークキャップハッカーです。さらに、それらがどのように機能するかを理解することは、起こりうる脅威を区別して焦点を当てることで予防策を支援することができます。すべての脅威を回避することは不可能です。しかし、これらの能力により、サイバーセキュリティの専門家は起こりうる危険の影響を制限したいと思うでしょう。倫理的なハッキングのトレーニングは、ネットワークセキュリティがこの種の考え方を構築するのに役立ちます。

2.隠されたテクニックを知り、より良い方法を探る

システムを倫理的にハッキングすることで、データビーチをもたらした可能性のある豊富なセキュリティの選択肢を見つけることができます。

正しいアプローチで、従うべき最良のセキュリティ慣行と新しいアイデアについて考えることができます。これらの概念を学ぶことは、専門家の職業だけでなく、プラットフォームを変更することを選択したときにも利用されます。

Hackernoon記事より引用)※機械翻訳

 

キタきつねの所感

この記事が気になったのは、Twitterのタイムラインに以下の投稿が流れていた事があったからです。私も普段の記事で無意識に「ホワイトハッカーという用語を使っていますが、ジャパニーズイングリッシュである事を改めて認識します。

 

 

あまり意識して考えた事がなかったのですが、 英語では「Hacker」という単語には、良い意味でも悪い意味でもハッキングする人という意味が含まれているかと思います。

※辞書によって定義が違っている(ブラックなハッカーを指している記載になっている)ケースもあるので、「元々は」と言った方が良いかも知れません。

例えば、Merriamの辞書Hacker | Definition of Hacker by Merriam-Websterでは、

1: 1というハック
2:特定の活動に不慣れまたは未熟な人
テニスハッカー
3:コンピューターのプログラミングと問題解決の専門家
4:コンピュータシステム内の情報に不法にアクセスし、場合によっては改ざんする人

3がいわゆる「ホワイト(ハット)ハッカー」、4が「ブラック(ハット)ハッカー」のニュアンスで書かれています。

 

IT寄りのTechTargetの定義What is hacker? - Definition from WhatIs.comでは、もう少し詳しく書かれていて、

 

ハッカーとは、コンピューター、ネットワーク、またはその他のスキルを使用して技術的な問題を克服する個人です。ハッカーという用語は、技術的なスキルを持っている人を指す場合がありますが、多くの場合、犯罪を犯すために自分の能力を使用してシステムやネットワークへの不正アクセスを取得する人を指します。ハッカーは、たとえば、個人情報の盗難、システムの損傷またはダウンを介して人々を傷つけるために情報を盗み、多くの場合、身代金を徴収するためにそれらのシステムを人質にとどめる可能性があります。

ハッカーという用語は歴史的に分裂的なものであり、技術的な問題へのアプローチにおける創造性だけでなく、高度なスキルを示す個人への称賛の用語として使用されることもあります。ただし、この用語は、違法または非倫理的な目的でこのスキルを使用する個人に一般的に適用されます

こちらの方がしっくりきますが、(良い意味でも悪い意味でも)技術的なスキルを持っている人という意味と、その技術的なスキルを悪用する人という、2つの意味で定義しています。

元々はスキルがある人から派生したのが「ブラック(ハットハッカー」であり、「ホワイト(ハット)ハッカー」であったと言えるかも知れません。

 

日本で「ホワイトハッカー」の用語が誤定着したのは、忠鉢 洋輔(@ybachi)氏が言う様に、「マック」「スタバ」「ケンタ」「トイレ」と、何でも省略したがる「日本特有の略語」文化の影響かと思います。

 

「ホワイトハッカー」を「ホワイトハットハッカー」「ホワイトハット」に直すべきだ!と言っても、一度誤定着した用語を変えていくのはなかなか大変かと思います。

かと言って、両方の意味が含まれる「ハッカー」を使うのも違和感がある方が多いかと思います。

 

私は、ホワイト(ハット)ハッカーの類語であり、最近海外記事でよく見る様になってきた「倫理的ハッカー(ethical hacker)」の用語を定着させる方が、現実的な気がします。

ejje.weblio.jp

倫理的ハッキング《システムの安全性点検などのために契約に基づいて行なわれるシステム破りなどのハッカー行為》.
ethical hacker 【名詞】 倫理的ハッカー.

 

EC-Councilでは国際的な倫理ハッキングプログラム(認定制度)があり、多くのCHE(Certified Ethical Hacker)認定者を輩出しています

www.eccouncil.org

 

 

しかし・・・「倫理的ハッカー」普及には課題がありそうです。

 

 

日本でのCHE取得トレーニングを提供しているGSXさんのサイトを見ると・・・

www.gsx.co.jp

 

「認定ホワイトハッカー」・・・と訳していますね。

 

教育トレーニング提供会社が、EC-Councilが「Ethical」と銘打った所を「ホワイト」と訳し直す所に、何かもやもやとしたモノを感じました。

※もう1社検索では出てきましたが同じ”訳”でした。

 

 

本日もご来訪ありがとうございました。

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 ホワイトハッカー集団のイラスト

 

更新履歴

  • 2021年4月18日 AM