Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

人を騙す手品のテクニック

本日気になったのが専門分野に少しだけ近い、こちらの記事。

mainichi.jp

茨城県警牛久警察署は13日、牛久市の無職女性(84)が、自宅を訪れた女に金融機関のキャッシュカードをトランプのカードとすり替えられ、現金自動受払機(ATM)から計約187万円を引き出される被害があったと発表した。高齢者を狙った特殊詐欺事件として捜査している。

 

キタきつねの所感

土日で大きなセキュリティ関係の記事が無い場合は、こうしたベタ記事が気になってしまいます。単なる詐欺事件だと思って読み飛ばそうと思ったのですが、「トランプ」がこの手の詐欺事件の中では”初見”だったので、じっくり読んでしまいました。

 

同署によると7月26日午前、警察官を名乗る男から女性の自宅に電話があり、「あなたの口座から現金が引き出された。保険で返金されるので、暗証番号を教えてほしい」と伝えた上で「キャッシュカードを使えなくするために人を行かせる」と説明。その後、女が訪れ、女性の目の前でキャッシュカードに切り込みを入れたうえで、女性に封印させた。女性はカード入りの封筒を手元に置いていたという。

毎日新聞記事より引用)

 

(被害に遭われた方には失礼な言い方となり申し訳ありませんが)ソーシャルエンジニアリングの事例として、十分題材になりそうな気がします。

詐欺手口としては、警察を名乗る手口・・・ここが金融機関を名乗るパターンもありますが、保険返金の為に「暗証番号が必要」と引っかかってしまう所にモヤモヤとしたものを感じますが、高齢者の判断能力を考えると、仕方が無い部分だったのかも知れません。

また、最初に暗証番号を電話口で聞くというパターンもあまり聞いた事がありませんが、キャッシュカード媒体を騙して盗む行為と”時差”が発生するので、警戒心を薄れさせる効果があったのかも知れません。

 

さらに新たな”手口”が、『カードに切り込みを入れる』部分です。恐らく端っこに切り込みを入れる程度だったのかと思いますが、無効化処理の”無知”を突いた(上手い)騙しの手口だと思います。

 

カード媒体で実際にデータが格納されているのは2か所あります。。下のイラストでは、▲ CASH CARDと書かれた表(隠しテープ)または裏に「磁気テープ」があり、また左中に金色のICチップがあります。この2か所に情報が格納されています。

キャッシュカードのイラスト

この内、ICチップは詐欺グループがすぐに解読できないと思いますので、カード無効化したい場合は、磁気テープをハサミで(少し硬いですが)切ってしまうと良いかと思います。(※クレジットカードも同様な処分法が有効です)

クレジットカードをハサミで切っているイラスト

 

※カードやCD-Rなどの媒体も破壊できるシュレッダーを使うと更に安心ですが、ハサミで切って、そのまま捨てるのであれば、切った右と左のパーツを、別々なごみ袋に入れて捨てると尚安心かと思います。

 

最後の”初見”がトランプへのすり替えです。

しかし翌日までに、キャッシュカードの口座から10万~50万円に分けて計約187万円が引き出され、不審に思った金融機関職員が同署に通報した。手元の封筒を調べたところ、中身はキャッシュカードではなくトランプだった。女性が封印する印鑑を取るために目を離した隙(すき)に、女が封筒をすり替えたとみられる。

女は20代後半~30代前半、白いブラウスと黒の長ズボンを身につけていたという。

毎日新聞記事より引用)

 

そもそもカード無効化処理をしていながら、封印処理をする必要があるのか?という疑問はさて置き、目を離した隙に封筒をすり替える・・・これは手品(すり)のテクニックです。どうやらキャッシュカードをだまし取る手口は、頻発している様ですので、自分や自分の両親がこの手の安い”手品”に引っかからない様に普段から会話をしておくと良いかも知れません。

 

余談です。以前に紹介した事がありますが、このTED動画を思い出しました。

 

人は騙されるべくして生きている事がよく分かるので、自分は大丈夫と思われる方こそ(まだ視聴されていなければ特に)見てもらいたい動画です。

www.ted.com

 

 

本日もご来訪ありがとうございました。

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 悪い警察官のイラスト

 

更新履歴

  • 2021年8月14日 AM