Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

偽レビューによる日本の個人消費は64億ドル

顧客獲得ベンダーCHEQボルチモア大学と協力して主要なEコマースサイトのデータを分析した調査によると、偽のオンラインレビューに影響を受けた世界の個人消費推定1,520億ドルに達すると分析されています。

www.infosecurity-magazine.com

レポートの見出しの主張は、Amazon、TrustPilot、Yelp、Tripadvisorなどのプラットフォーム全体での偽のレビューの平均率が4%であり、2020年の世界のeコマース市場規模は約4.3兆ドルと推定されています。

偽のレビューの影響を受けた米国の個人消費額は約280億ドル、日本では64億ドル、英国では50億ドル、カナダでは23億ドル、オーストラリアでは9億ドルに分類されます。

米国では、旅行とファッション(両方とも約40億ドル)が純粋な経済的観点から最も影響を受けるセクターであり、次に電子機器(30億ドル)、家具と家庭用品(20億ドル)、娯楽(10億ドル)が続きます。

(Infosecurity Magazine記事より引用)※機械翻訳

 

元ソース

Fake Online Reviews2021 (CHEQ)

 

キタきつねの所感

丁度Amazonのセール情報を物色している時期だったので、この記事が引っかかりました。

2019年のNHKクローズアップ現代の衝撃的な”やらせレビュー工場”の放映から、大分経ちますが、未だにやらせレビューは全世界での問題になっている事が、この最新の調査資料で裏付けられた気がします。

foxsecurity.hatenablog.com

 

調査対象サイトに日本のAmazonや旅行サイトのTripadvisorが入っている様ですが、日本ローカルのサイトが含まれては無いと思われます。しかし、偽レビューが全体の4%である点や、日本ユーザが、偽レビューに騙されて(誘導されて)購入している消費額が64億ドル(約7,088億円)にも上ると言うのは、日本だけではありませんが、憂慮すべき事だと思います。

 

今回の調査対象国の中で、この数字は米国に次ぐ第2位の”売上実績”となっており、偽レビューがビジネスの根幹にある販売業者が多い事を物語っています。

とは言え、全世界の偽レビュー平均の4%(日本だと3.6%)は、普段私がAmazonの買い物で出会う”偽レビュー”の比率から考えるとかなり控えめな数字だと思います。

 

 

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日本:総消費支出額:1810億ドル(約20兆円)

   オンラインレビューの影響を受けた支出額:1610億ドル(約17.8兆円)※89%

   偽レビューに影響を受けた支出額:64.4億ドル(約7,088億円)※3.6%

 

分野別で見ると、米国では旅行とファッションの偽レビューの影響が大きい様です。

例えばコスパが良い!と評された5つ星評価のホテルやレストランが、期待値以下のホテルのサービスしか受けられなかった場合、旅行自体の満足度まで影響する事を考えると、AmazonやTripadvisor等のプラットフォーム事業者には偽レビュー対策をもっと厳格に行って欲しいと思います。

しかし、現実問題として、偽レビューを取り巻く状況は数年前からあまり変わりは無く、ある意味さらに深化(洗練)されてきている様に感じます。その1つが”お小遣い稼ぎ”日本人層を狙った販促です。

商品と引き換えに星5レビューを要求し、レビューを確認したら”返金処理”を行う手法は記事にも書かれていますが、最近はこれだけでは無い気がします。

レポートは、5つ星のレビューで地下取引の規模が非常に大きいことを明らかにしており、レビューごとに25セントから100ドルの間のどこかで請求されていると主張しています。レビューアは、「レビュー」のためにアイテムを購入するように促される場合があります。その後、コミッションに加えて、そのアイテムが払い戻され、保持することが許可されます。

(Infosecurity Magazine記事より引用)※機械翻訳

 

星5レビューをしてくれればAmazonギフトコードを進呈するといった”チラシ”が商品に同封されていた事が1度あります。その時は”怪しい”と感じて無視しまいましたが、ネットの書き込み等を見ると、報酬はきちんと”支払われる”様です。

 

偶然にも海外記事だけでなく、本日の読売新聞にも同様なやらせレビューの記事が出ていましたが、こちらを読むと、例えばAmazonでは海外(ほとんどが中国)からのやらせ書き込みが出来なくなったので、日本人(やらせ)レビュワーにシフトしている様です。

www.yomiuri.co.jp

  関係者によると、以前は不正の疑いがある日本語のレビューは、中国国内から書き込まれていた

 各商品には、最高5の総合評価が表示されている。これは、多数のレビューの星の数やコメントなどから、同社が算出しているとされ、不自然な日本語でも、「星五つ」を大量に投稿すれば、評価をつり上げることも可能だった。

 手口が変化したのは1、2年前だ。海外からの不審な投稿が一部制限されるようになり日本人募集に移行しているという。

 しかし、商品の欠陥などが覆い隠されるリスクもある。同じ種類の商品では、評価が高いものが上位に表示されやすいためだ。

 

コロナ禍で”お小遣い稼ぎ”程度の感覚で、偽レビューに加担している日本人はかなりいると思われますが、最大リスクがアカウント停止程度だと、複数アカウント、あるいは家族アカウントを駆使する人にはあまり効果は無いので、AI技術が進歩するまでは、まだまだ偽レビューは減らないのかと思っています。

 

そんな中で、自衛策としては「サクラチェッカー」が有名ですが、最近私はそこそこの買い物ではReviwMetaも併用する様にしています。

※日本のAmazonに対応

reviewmeta.com

 

例えばサクラチェッカーで90%のさくら判定が出た扇風機が、

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ReviwMetaでは、さくらデータを排除した(恐らくまともなレビュー投稿)で再評価してくれる所が良い所と思います。

この製品の場合、意外にも”実は評価が低い訳ではない”(評点4.8)と再評価されました

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最後は当たり外れが”運まかせ”になる事は仕方が無い事にしても、面倒でも購入前に慎重にチェックする事によって満足度が違ってくるのだとすれば、やはりその1手間はかけるべきなのではないかと思います。

 

AmazonPrime dayは6/21(月)~6/22(火)です。

  

 

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ファクトチェックのイラスト

 

更新履歴

  • 2021年6月17日 AM