Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

ホテル予約ミスは自己責任

スウェーデンでホテルの予約を1日間違え、ホテル(バーのソファー)での仮眠をホテル側に断わられた中国人観光客の問題が外交問題化していました。とは言え、これを外交問題化するならば、中国政府は毎日、他国にクレームをつけなければらないレベルなのですが・・・。

www.recordchina.co.jp

ホテルとの交渉に敗れた観光客が女性警官2人に担がれて外に出される動画も出てきています。

dai.ly

中国人の曽(ズン)さんと両親の3人は今月2日未明ストックホルム市内の宿泊施設に到着した。チェックインが可能になるまでまだ時間があったため、両親の体調を心配してロビーの椅子で休憩したいと伝えたところ、「すぐに出て行け」と言われ、警察に通報された

曽さんは警察官に両親が服用している薬について説明し、両親だけでもホテルのロビーに留まらせてほしいと訴えた。だが警察官は曽さんの父親を椅子の上から抱えあげてホテルの外に放り投げるなどし、最終的には3人を警察車両に載せ、数十キロ離れた墓地に置き捨てにしたという。

(Record China記事より引用)

 

最初は「人権侵害」と憤っていた中国側も、上記の動画や、事件の続報が入るようになり、「実は真実は違うのではないか・・・」と思う人も増えてきているようです。

 

2018年9月17日、網易は、スウェーデンで中国人観光客がトラブルを起こし、中国のネット上から「ビッグベビー」などの批判が飛び出す一方で、現地の中国大使館が明らかにした実際の状況を紹介した。

記事は「中国人観光客一家3人がスウェーデンで粗暴な扱いを受け、ネットユーザーから激しい憤慨の声が出た。しかし、その後拡散した動画によって『ホテルで一泊追加するのにお金を払おうとせず、狭いロビーに居座ってホテルの営業に大きな影響を与えた』と伝えられると、中国国内のネットユーザーはほぼ一辺倒にこの中国人観光客について『ビッグベビー』『中国人の恥さらし』などと非難し始めた」とした。

そして、この一件について、スウェーデンにある中国大使館は「当該中国人とその家族はもともと、9月1日に現地ホテルにチェックインするつもりだった。しかし、中国人は予約を取り間違えており実際には2日のチェックインとなっていた」と説明。1日深夜にホテルに到着したものの部屋は予約でいっぱいだったため、中国人は「使用料は払うので、1階のバーにあるソファで時間を過ごさせて欲しい」と頼むも、ホテル側は同意しなかったと伝えている。

(Record China記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

動画を見ると、観光客がホテルからつまみ出された後に、女性警官が触ってもいないのに倒れこむ男性の姿も映っています。(※中国ネットユーザの一部は「オスカー間違いなし」とコメントしてました)この画像を見る限り、ホテルあるいは現地警察の対応は普通だったのではないかなと思います。

 

一方で、事件報道を受けて中国政府の外交部は、早々に「中国側はスウェーデン側に対して、中国側の懸念を重視し、適切な措置を講じて中国人観光客の安全と合法的権益を保障するよう求める」と表明してしまいます。

www.recordchina.co.jp

レコードチャイナの記事によれば、

 ①中国人のロビー待機が認められなかった

 ②中国人旅行客の内2名が高齢で、1名が病気だと説明したのに警察に強制排除された

 ③警察は3人を郊外の墓地に連れて行き放置した(深夜で気温は10度以下)

事が人権侵害である、との中国外交部の主張だったようですが、

①に関しては、ホテル側はセキュリティ上の理由で、満室時に予約が無い客の滞在を断われる権利があるのは当然な気がします

事件が起きた2日深夜は日曜日ですホテルの対応人員も少なくホテルのバーもクローズしている時間帯であれば、どう考えるでしょうか?人道的理由で仮に滞在を許してしまい、その滞在客が(更に)問題を起こしたらどうなるのでしょうか?ホテル側には正規宿泊者の安全を守る事が求められる訳ですが、この旅行客3名が仮にテロリストだった場合、中国政府は同じ事を言えるのでしょうか?私は難しいのではないかと思います。

ホテル側には当然の事ながら、中国人旅行客がフロントやロビーで激しく騒いでいたカメラ映像が残っているものと思います。(敢えて出さないのではないでしょうか・・・)その経緯部分はホテル側は公開しておらず、上記SNS等々映像には映っていませんので推測となりますが、当該の中国人旅行客は『相当ホテルフロントと交渉した』のではないでしょうか?煩くロビーで深夜に騒ぐ不審な客がいれば、警察を呼ばれてしまうのは当然だと思います。

仮に、他国まで来て中国式の交渉をしていた(ゴネていた)のだとすれば、私は旅行客の自業自得の結末だったのではないかと思います。

②については、そもそも病気の高齢者を考えるのであれば、ホテル予約をきちんと取るべきであり、その予約を取った人、あるいは旅行代理店を使っていたのであれば、予約日が違う事を注意しなかった旅行代理店に文句を言うべきであって、ホテルや現地警察ではないと思います。

病気であろう、女性が2名の警察官によって運ばれている姿も映っていますが、、乱暴に移動されたというより、ホテルに居座ろうと抵抗している女性を仕方なく動かしている程度にしか見えません。

外に出されても、男性旅行客は殺人だ!』と周囲に騒ぎたて、警察官の暴力まであったように見せかけた姿が映像に残っていますが、、女性警官2名は何もしてないようにしか見えません。

この程度で外交問題になるならば、中国人観光客の多くが、色々な意味で海外諸国から制約を受けてしまう未来しか思い浮かびません

③最終的に3人の旅行客は警察車両で観光墓地に置き捨てにされたと主張しますが、スウェーデン側は公園のような所だったと説明しており、近くに教会が運営する24時間の一時宿泊施設地下鉄の駅が近い場所だったようです。そう考えると、警察は安全な場所に運んでくれようとしただけであり、残念ながら観光客側が(興奮して?)英語でのコミュニケーションが不十分であった事から、墓地と勘違いしただけなのかなと思います。

 

ホテルは保安上の理由で満室時にこうした対応を取るのは当たり前と考え、もっと早くホテルに到着するスケジュールを組むか(それなら代替案はもっとあった事でしょう・・・)、もしくは、空港に留まっていたら仮眠程度は出来たのではないかなとも思います。

 

モーニングコールのイラスト

 

 

更新履歴

  • 2018年9月23日AM(予約投稿)