Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

性善説思想では、もはや秘密は守れない

日産自動車の発売前のリーフ写真のリークした元取引先従業員が逮捕されていました。

www.sankei.com

(EV)「リーフ」の新型モデルの写真をインターネットに投稿したとして、神奈川県警は15日、不正競争防止法違反(営業秘密侵害)と偽計業務妨害の疑いで、取引先の自動車部品メーカーに勤務していた30代の元社員を書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。

 県警は、発表前の車の画像は企業秘密に当たると判断した。

 捜査関係者によると、書類送検容疑は、新型モデル発表前の昨年8月、仕事で訪れた神奈川県横須賀市の工場で写真撮影してツイッターに投稿し、業務を妨害したとしている。

産経新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

日産自動車も、ある意味災難であるのかも知れません。発表1ヶ月前の2017年8月5日に身内に近しい取引先(少なくても製造ラインに入れる程に信用されている取引先企業)の従業員が新車情報Twitterに漏えいしたのですから。

Twitterの画像魚拓を見ると、個別のTwitterアカウントに対してのメッセージにも見えます。土曜日でしたので、仕事からの開放感・・という部分もあるのでしょうが、発売前の新車情報(しかも発表前)というのがどれだけ秘匿性が高いものであるのが、言葉では分かっていても頭では理解してなかったのかも知れません。

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調べていくと、8月には、おそらく事件化される事を予感させるようなネットでの取り上げ方をされていましたし、情報を漏えいした元従業員本人の写真まで出ていました(色々なところで書き込みをしていたのが追跡されたようです)。

普通は身分を隠して投稿するようなリーク情報ですが、おそらく新車の写真を(日産の許可を得ずに)撮る事、及びそれを外部漏えいする(SNSも含む)事がいけない事である、会社間の秘密保持に抵触する可能性がある、そういった事が分からなかったのだと思います。

日産も、不正検査問題に引き続き、こうした内部からの情報漏えいの問題まで出てきてしまったのですから、内部の引き締め(新車情報は・・・再教育でしょうか。サプライチェーンまで含めて)が必要な時期と言えそうです。

とは言え、素朴な疑問としては、工場工程に作業ではいる取引先のスマホ(携帯)は持込みされても日産としては問題なかったのでしょうか。おそらくルールでは持込みを禁止していたのだと思うのですが、実効性が無かったのかも知れません。

 

リークがあった8月には、ネット上はお祭り騒ぎだったようですが、いくつかの記事を見ていると、やはり自動車工場のラインにおいて、私物スマホの持ち込み禁止は難しそうなコメントがあちこちに載っていました。

kagepon.com

それが現実だとしても、テストコースで車の形状を必死に隠しても、工場ラインに潜り込めると写真が撮り放題というのであれば情報管理って何だろう?と思いますし、そもそも新車が発表される時の期待感がまったく違うかと思います。それは新型iPhoneの発表前リークが続いているアップルと同じかも知れません。

時に株価にまで影響する重大なイベント。それが新車発表なのですから、秘密情報は、従業員(あるいは協力会社の社員)の性善説に基づく管理だけでは限界なのだと思います。工場工程への完全持込み禁止が難しいのだとしても、せめて休憩室の中だけでスマホ利用させる(私物ロッカーを休憩室に置いたら?と思うのですが)ような運用から始めても良いのではないでしょうか。

併せて、気軽に撮った新車写真が引き起こす社会的な影響についても徹底的に教育することも早急の課題と言えそうです。

 

新車をリーフ・・ぢじゃなかった、ークさせている場合ではなく、”スマホ禁止もやっちゃえ”る事を期待しています。

www.youtube.com

 電気自動車のイラスト

 

更新履歴

  • 2018年6月16日PM(予約投稿)