Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

学生のハッキングが称賛される時代に

朝日新聞に10代のサイバー犯罪が増えているとの気になる記事が出ていました。

www.asahi.com

警察庁のまとめによると、昨年に不正アクセス禁止法違反事件で検挙された全国255人のうち、14~19歳は92人と、年代別で最多だった。英国でも2015年のサイバー犯罪容疑者の平均年齢は17歳で、報告書で「他の犯罪類型よりも若いのが特徴だ」とされた。

 昨年6月には、千葉市の高校生(当時16)がツイッターに似せた偽のログイン画面を開設し、他人のIDやパスワードをだまし取ったとして宮城県警に逮捕された。少年は「(国際的ハッカー集団)アノニマスに憧れた」と話していたという。

 ネット上では、こうした犯罪を「天才」「神」ともてはやす風潮がある

朝日新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

昨年末~1月位にかけてDDoS攻撃で様々なサイトを落して(落したとTwitterアカウントでカミングアウトして)話題となっていたダークネス玉葱君(twitter)辺りも、10代ではないかと思いますが、佐賀県のSEI-NETの特権ID管理が甘い部分を攻撃した事件や、FWの設定不備を突かれた前橋市教育委員会の事件の様に、自分の学校を攻撃するような例もあります。

人間心理学の権威アブラハム・マズローの「欲求階層説」では、5つの自己実現のための欲求があるとされていますが、これで考えてみると・・・

  • 自己実現欲求
  • 承認欲求
  • 所属・愛の欲求
  • 安全・安心の欲求
  • 生理学的欲求

ハッキング行為に手を出す未成年は、多くが「承認欲求」つまり、自分の存在・能力を他者(社会)に認めて欲しいと考えている気がします。

charm.at.webry.info

 

昔であれば、服装違反、暴走、飲酒・・・といった社会的ルールへの反抗という目に見えた形で承認欲求を満たそうとする人が多かったのですが、今やネット社会子供は生まれた時から電子機器に囲まれ、操作にも習熟しています。そして残念な事に、ネット上には気軽に攻撃できるツールが、少し調べれば手に届くところに転がっていますし、その使い方まで情報が掲載されています。また、お金さえ払えば代理でDDoS攻撃をしてくれるサイトもあったりします。

更に言えば、技術的に未熟な10代の学生の犯罪は、昔であれば警察に追跡されて捕まっていたのですが、PC遠隔操作事件で警察が誤認逮捕を繰り返した際に世間に知れ渡ってしまった様に、匿名ツールをきちんと使うやり方を駆使すれば、なかなか犯行を追跡できません。

ある意味、こうした事実が、犯罪者側の安心感(ゲーム感覚)につながっています。

thepage.jp

そうした意味では、気軽にサイバー攻撃が出来てしまう環境が整備されてしまっていると言う事が出来るかも知れません。

ではどうして守っていくべきなのか?という、永遠の課題に戻る訳ですが、私は学校が教える事の範疇でないかと思います。犯罪を行うのが未成年であるならば、ネットについて、あるいは犯罪の結果がどういったものになるのか、そうしたもう少し深く突っ込んだ議論が無い事が、10代がサイバー犯罪を気軽に行う現状の大きな要因となっていると考えます。

とは言え、学校の先生こそ、最初に勉強すべきだと思います。学校と言う象牙の塔に篭っていて、世の中がどうなっているのか、特にネットがどうなっているのか、目を背けているとしか思えない先生方が多い気がします。

すべて先生が教え込む必要はないと思いますが、外部の専門家の力を借りてでも、こうした学生に対する取り組みを進めていって欲しいな・・と切に願います。

 

ハッキングが称賛されるのは映画の世界の中で良いのです。

 

 

 

参考:SEI-NET

tech.nikkeibp.co.jp

参考:前橋市教育委員会

d.hatena.ne.jp

参考:ランサム

www.yomiuri.co.jp

 

 

 

少年犯罪のイラスト

 

更新履歴

  • 2018年7月15日AM(予約投稿)