Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

赤坂御用地への不正侵入

米国だけでなく、日本の重要施設の物理セキュリティも色々と潜在課題がある様です。

news.tbs.co.jp

 この事件は、今月2日午後9時40分すぎ、20代の男が迎賓館の門を乗り越え、その後、天皇皇后両陛下のお住まいがある赤坂御用地の敷地に侵入したものです。男は迎賓館に侵入したおよそ40分後、迎賓館と赤坂御用地の境界にある扉から御用地に入り、侵入に気づき、捜索していた皇宮警察の護衛官に三笠宮邸付近で身柄を拘束され、現行犯逮捕されました。

 「男は、迎賓館西門の高さ2メートル以上ある門を乗り越えました。門の近くには警備を担当する内閣府警衛官がいましたが、気づかなかったということです」(記者)

 迎賓館の警備は内閣府警衛官が、赤坂御用地の警備は皇宮警察の護衛官が担当していますが、迎賓館に男が侵入した後、侵入を知らせるセンサーが複数回鳴ったにもかかわらず、内閣府警衛官がセンサーを切っていたことが関係者への取材で分かりました。小動物などによる誤作動と勘違いした可能性があるということです。

 警衛官は男の侵入に気づかず警察にも通報していなかった

(TBSニュースより引用)

 

キタきつねの所感

当該の内閣府警衛官は「何も発生しない」というバイアスが掛かっていたとしか思えない怠慢さです。

 

このニュースでは警備担当が2つに分かれている事が分かります。ミスを犯したのは内閣府警衛官」であり、最終的に侵入者を捕まえたのが皇宮警察の護衛官」と報じられています。各々の担当は迎賓館警備が内閣府警衛官、御用池(より内側の両陛下のお住まいのエリア)が皇宮警察となっている様です。

 

普通に考えれば、重要施設における警備のプロである警衛が、2mのフェンスを侵入者が乗り越える所を気づかないだけでなく、複数回のセンサー警報を誤検知だと判断し、しかも自組織で侵入者の身柄を拘束できないという事は想像がつかないのですが、現実問題として、この「ヒヤリ・ハット」が発生しているので、日本の他の重要施設でも同様な侵入を防ぎきれない可能性がある事を示唆している気がします。

 

侵入を知らせるセンサーが複数回鳴ったにも関わらず、警衛官は(誤検知だとして)センサーを切っている。普段からそうしていたのでしょうか。

恒常的に猫や鳥の”侵入”被害が発生する環境だった可能性は考えられますが、警備の基本が「確認(視認)」である事を考えると、何も確認せずにセンサーを切り、及びセンサー発報の事実を皇宮警察の関係部門に報告(エスカレーション)しなかった事は、警備者としての基本が出来てない事に外なりません。

 

この侵入事件はいくらセキュリティツール(警報システム)が検知していても、使い方を誤り「誤検知」だと人が判断する事の危うさ、いわゆる人の脆弱性の問題だった気がします。

 

尚、警備体制の改善を図るのであれば、センサー発報の情報が集中監視室(セキュリティコントロールルーム)や皇宮警察に共有される(申し送りする)様な仕組みにする事も有効かと思います。

こうした対策によって、1人の警衛官が「誤検知」を判断する事がなくなり、場合によってはセキュリティコントロール側から監視カメラの録画映像を確認したり、追加で警備員を応援派遣したりすることが可能になるかと思います。

 

余談です。記事には一切書かれていませんが、すぐそばに警備担当の警衛官が居て、2m以上の正門を乗り越える事に気づかない・・・。侵入者が棒高跳びか高跳びのオリンピック選手警衛官が内通者警衛官が寝ていた位しか理由が想像できませんでした。

 

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柵を乗り越えて侵入する人のイラスト

 

更新履歴

  • 2021年1月16日 AM