Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

悪玉ドローンor悪玉大統領?

ドローンを使った暗殺未遂事件、心配されていたドローンを使ったテロというのも現実性を帯びてきたのかも・・・と当初は思ったのですが、違った展開を見せ始めています。

mainichi.jp

 政権側の発表によると、容疑者のうち1人は、兵士2人が死亡した2017年の軍施設襲撃事件に関与し、別の1人は14年に反政府デモに参加して拘束されていたという。6人の名前は明らかにしなかった。プラスチック爆弾1キロを積んだドローン2機のうち1機は空中で爆発し、別の1機が近くのアパートに墜落マドゥロ氏ら政権幹部にけがはなかったが、兵士7人が負傷した。政権は、政権と対立する米国や国内の右派勢力、コロンビアのサントス大統領が背後にいるとの見方を示す。

毎日新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

マドウゥロ大統領が演説中に爆発音がし、国防兵士が逃げ惑う映像。少し前に大統領が上空を見上げているところからドローンを使ったテロ攻撃なんだ・・と思ったのですが、政権側から公開された映像を見てみると、、、

www.youtube.com

爆発音はしますし、逃げる人々は映っているのですが、肝心の攻撃をかけてきたドローンの映像はなく、近くのアパートが爆発痕跡を残している映像だけが出てきます。

 

別なニュースソースを見ると、面白い事が書いてました。

マデュロ大統領は後の国民に向けた演説で、「飛行物体が私の近くで爆発した大きな爆発だった。数秒後に第2の爆発が起きた」と語った。

しかし、爆発物搭載ドローンが爆発の原因であることを示す第三者による検証は行われていない。また、APによると、爆発現場にいた消防士らは政府の発表に異論を唱えている。

記事によると、演説会場近くのアパートでガスタンク爆発があり、窓から煙が流れ出るところが見えた可能性がある、と市当局は語っている。しかしAPは、どうやってその結論に達したかの詳しい説明は提供されていないことを付け加えた。

(Techcrunch記事より引用)

 

毎日新聞の記事と併せると、1kgのプラスチック爆弾を積んだドローンが、大統領の近くで爆発した事になります。

とは言え、高性能プラスチック爆弾(C4)でも1kg程度だと、厚めのコンクリートを壊す程度しか爆発力が無いと思います(C4はTNT火薬の1.35倍と言われてますので・・・予想される爆風はC4-1kgだとすると条件が良くても20-30m以下ではないでしょうか?)。

”脅し”や『テスト』であった可能性はありますが、本気で大統領を狙った攻撃ならもっと量が多くないと難しかったのではないかと思います。

 

因みに2kgのC4でこの程度らしいです。

www.youtube.com

 

爆発力の問題や『そもそもドローンの大きな飛行音に、会場に居た人が誰も気づかないの?』という部分を加味すると・・・

今回の件は世界初のドローンによる暗殺未遂事件ではなく、FOXニュースに大統領補佐官がコメントしていた内容の方が真実味がある気がしてきます。

 ボルトン米大統領補佐官は5日、米FOXニュースのインタビューで「米政府は全く関与していないと明確に言える」とし、「マドゥロ政権自身による自作自演などの可能性がある」と指摘した。

毎日新聞記事より引用)

 

とは言え、爆薬の代わりに科学物質(神経ガス等)を使う場合や、それこそ榴弾を上から落す様な狙い方も考えられます。また、ドローンの搭載量が今よりもっと大きくなれば、脅威は加速度的に増すので、東京五輪だけではなく、色々なケースで悪玉ドローン対策は考えていかなければならないのは変わりはありません。

 

ドローンを悪用している人のイラスト

 

更新履歴

  • 2018年8月13日PM(予約投稿)