Fox on Security

セキュリティリサーチャー(インシデントアナリスト)で、セキュリティコンサルタントのキタきつねの独り言。専門はPCI DSS。

逃げるなら四国

単に個人的な興味ですが、樋田容疑者の記事はなかなか示唆に富んでいると思います。

mainichi.jp

 県警によると、8月30日午後11時半ごろ、須崎署に「道の駅のトイレ付近に不審な人物がいる」と連絡があった。パトロール中だった地域課の男性署員2人が駆け付け、職務質問すると、樋田容疑者は偽名を伝え「和歌山から来ていて、八十八カ所巡りをしています」と答えたとみられる。身分証は持っていなかったが、所持品検査をすると、衣類などが多く入っており、署員は「受け答えは素直でちゃんとしていたし、お遍路さんだと思って怪しまなかった」と話しているという。 

毎日新聞記事より引用)

 

◆キタきつねの所感

48日間の逃走において、私が一番興味があったのが逃走ルートでした。その辺りがようやく情報として出てきたのですが、毎日新聞の記事をベースにすると、大阪>淡路島>広島>しまなみ海道>愛媛>高知(※職務質問有)>徳島>香川>しまなみ海道>広島>山口となっていました。

mainichi.jp

 

前回の記事にも書きましたが、逃走資金がもう少しあったら、更に遠くまで逃走されて、それこそ日本一周も夢ではなかったかも知れません。

個人的な疑問では、どうやって自転車で四国に・・・と思っていたのですが、共犯者(車での移動)ではなくて、自転車への監視がゆるいしまなみ海道を使う辺り、考えられた逃走であった事がよく分かります。

diamond.jp

しかし、彼の逃走劇により、残念ながら行政ががんばって努力してきたしまなみ海道も、『お遍路さん』も、事件発生時あるいは不定期に、身分証チェック対象となってしまうかも知れません。なぜなら、四国にいる間は、

樋田容疑者は香川県三豊市高知県田野町の道の駅で、お遍路のような姿で旅しているのを住民らに目撃されている

毎日新聞記事より引用)

とされているからです。

 

樋田容疑者のクレバーなところを考えてみると、捜査陣のプロファイリングがいかに役立たなかったかわかります。

  • バイクと思わせて自転車で逃走
  • サングラス/日焼け/顎鬚で印象を変える
  • 自転車への監視が甘い『しまなみ海道』を2回利用
  • 四国でお遍路さん偽装
  • 別な自転車旅の男を誘い、1名逃走と思っている警察監視網を騙す
  • 外来者や自転車が目立たない道の駅を頻繁に利用
  • 自転車で日本一周と標榜し善意の施しを受ける

意図的でなかった部分もあるかも知れませんが、高知県警も、その自転車旅姿を職務質問で見抜けずにスルーしてしまった事から考えると、彼のソーシャルエンジニアリングの技術に警察は完敗したと言っても良いのかも知れません。

 

勿論、四国の警察もまさか容疑者が四国に居るという前提ではなかったと思います。最初に取り逃がした大阪府警はともかく、高知県警の警察官が必ずしも悪かったとは思えません。

 

唯一『?』と思うところは、身分証を持ってなかったのに、それ以上追求しなかった点でしょうか。よく言えばお遍路さんに寛大であると言えますが、悪く言えば、こうしたクレバーな逃走者にはその善意を利用されてしまうのです。

 

逃走に使われた自転車には衣服のほかに、盗まれたと思われる釣竿まであったので、彼が釣りが上手かったら・・・・色々と考えてしまいますが、

www.fnn.jp

やはり、今回の万引きを捕まえたGメンが居なければ、もっと逃げられていた気がします。

 

foxsecurity.hatenablog.com

お遍路のイラスト

更新履歴

  • 2018年10月7日PM(予約投稿)